番外:気持のいい夕暮れ(05-5-25)
井上 出様
お便りありがとうございました。人生を謳歌しているとおっしゃられるとお恥ずかしい限りです。やむなく、このカナダで、このように暮らさざるを得ないといったほうが正しいでしょうか。
夫に突然去られたとき、本当に当惑いたしました。私はただ道楽な主婦でしかありませんでしたので、明日からどうして生活すればいいのか、考えがつきませんでした。ああいうとき、人は皆少しおかしくなってしまうのでしょうね。
夫の旅立ちを拍手で見送ったとき、私はすでに二つのことを決心していました。カナダ移住と本の出版です。 私は長く万年候補作家でした。それも純文学と称する物です。今ではそんなジャンルがあるかとさえ言われそうな代物です。駄作を出版してくれるところは勿論、貧乏弁護士の妻にはそんなお金もありませんでしたが、夫にいただいたお香典で本を出版することを決めたのでした。
二冊の本を朝日新聞から出版する手配をして半年後、私はコキットラムの住人になっていました。あのまま、日本にいればどうなっていたか、私は夫との思い出に押しつぶされてしまっていたのではないかと思われます。
私は小説よりも長く油絵も描いてきました。今でも絵描きではなく物書きでありたいと思っているのですけれど、いかにせん、物書きは炊きの元にはなりようもなく、ご飯つきのレッスンのまやかしで、この異郷の地で糊口をしのいでいるというわけです。
よって、人生を謳歌しているわけではありませんが、どこかカナダのおおらかな風土と国を超えた友人たちのネットワークに守られているのですね。勿論、医療費無料のケアーカードは一番の安心の元ではありますが。
蛇足ですけれど、過ぐる40年前、私は横河橋梁大阪支店長の秘書を数年していました。支店長は東大出の精鋭で、年上の課長に書類を投げて叱責していたこともありました。普段はとても優しい方だったです・・・・。当時はまだ四国架橋のプランなどが取り上げられはじめた頃でした。今日も井上様が読者ラウンジに書かれ、NHKのニュースでもかまびすしく放映されていますね。事件とははるかかなたで、遠い思い出をさぐっておりました。会社を経営するのは大変なことなのでしょうね。
鉄骨橋梁といえば、カナダの何もかもがすきなのですが、橋とハイライズのコンドミニアムだけは、私は嫌いです。ライオンズゲートブリッジ、ポートマンブリッジ、セカンドナローブリッジ、それからダウンタウンに林立するコンドミニアムなど、ひとたび地震が来ればおそらく倒壊間違いなしと思われるのです。神戸の地震を目の当たりにしていることと、若い頃、会社が工場でもあったので、とても頑丈そうな鉄骨橋梁を見て来ていますので、そう思えてなりません。
あらあら、ついつい、つまらないことを書いてしまいました。 お許しくださいませ。
柳谷 Chieko 拝
お便りありがとうございました。人生を謳歌しているとおっしゃられるとお恥ずかしい限りです。やむなく、このカナダで、このように暮らさざるを得ないといったほうが正しいでしょうか。
夫に突然去られたとき、本当に当惑いたしました。私はただ道楽な主婦でしかありませんでしたので、明日からどうして生活すればいいのか、考えがつきませんでした。ああいうとき、人は皆少しおかしくなってしまうのでしょうね。
夫の旅立ちを拍手で見送ったとき、私はすでに二つのことを決心していました。カナダ移住と本の出版です。 私は長く万年候補作家でした。それも純文学と称する物です。今ではそんなジャンルがあるかとさえ言われそうな代物です。駄作を出版してくれるところは勿論、貧乏弁護士の妻にはそんなお金もありませんでしたが、夫にいただいたお香典で本を出版することを決めたのでした。
二冊の本を朝日新聞から出版する手配をして半年後、私はコキットラムの住人になっていました。あのまま、日本にいればどうなっていたか、私は夫との思い出に押しつぶされてしまっていたのではないかと思われます。
私は小説よりも長く油絵も描いてきました。今でも絵描きではなく物書きでありたいと思っているのですけれど、いかにせん、物書きは炊きの元にはなりようもなく、ご飯つきのレッスンのまやかしで、この異郷の地で糊口をしのいでいるというわけです。
よって、人生を謳歌しているわけではありませんが、どこかカナダのおおらかな風土と国を超えた友人たちのネットワークに守られているのですね。勿論、医療費無料のケアーカードは一番の安心の元ではありますが。
蛇足ですけれど、過ぐる40年前、私は横河橋梁大阪支店長の秘書を数年していました。支店長は東大出の精鋭で、年上の課長に書類を投げて叱責していたこともありました。普段はとても優しい方だったです・・・・。当時はまだ四国架橋のプランなどが取り上げられはじめた頃でした。今日も井上様が読者ラウンジに書かれ、NHKのニュースでもかまびすしく放映されていますね。事件とははるかかなたで、遠い思い出をさぐっておりました。会社を経営するのは大変なことなのでしょうね。
鉄骨橋梁といえば、カナダの何もかもがすきなのですが、橋とハイライズのコンドミニアムだけは、私は嫌いです。ライオンズゲートブリッジ、ポートマンブリッジ、セカンドナローブリッジ、それからダウンタウンに林立するコンドミニアムなど、ひとたび地震が来ればおそらく倒壊間違いなしと思われるのです。神戸の地震を目の当たりにしていることと、若い頃、会社が工場でもあったので、とても頑丈そうな鉄骨橋梁を見て来ていますので、そう思えてなりません。
あらあら、ついつい、つまらないことを書いてしまいました。 お許しくださいませ。
柳谷 Chieko 拝

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