Wednesday, December 20, 2006

硫黄島 (2006/12/20)[s]

今日、「阿部様のご意見に異論あり」という投書が送られてきました。 本文は次の通りです。

「大阪八尾市の根屋 と申します。
かねてより「カナダこのごろ」を拝読させていただき、感謝しています。

ところで、先日の安部様の「硫黄島第2部」を拝読いたしました。拝読しつつ、次のくだりには異論をはさまざるを得ませんでした。

>アメリカの物量戦の前で、むなしく精神論だけで 退却、降参も出来ず死んでいく日本兵。

そうでしょうか。なるほどこの見方では、散華された戦士の方々のお気持ちに沿うのでしょうか。

この島を経由して内地を攻撃させないという気持ちで最後の兵士まで戦われたのではありませんか。

>こうした優れた反戦映画が 硫黄島を舞台に出来たことに 何とも言えない感動を覚えました。

小生はこの映画を「反戦映画」と捉えることはできませんでした。

極限状態の中にあっても、祖国にために最後まで戦った兵士の戦いざまと、日本兵の武士道に通じる精神を描いたのではないかと思っています。

皆様のご意見をお聞かせください。

根屋 雅光 拝」

* * *

この人、若い人でしょうか。 それとも皇国日本のいやさかを今でも信じている「愛国者」でしょうか。

私なら、貴兄と同じ気持です。 恐らくこの人は空襲も艦砲射撃も経験したことのない方でしょう。 

最近 「父親達の星条旗」を映画館でみてきました。 館内にはほかに5人程しかいませんでした。 (料金はシニアーで4ドル)  映写機のアーク灯が弱いのか、全体に暗い色調でした。 いや、私の目が弱いせいでしょう。 

近頃英語の理解力が衰え、兵士達の英語もわからず、筋もよくつかめないまま坐っていましたが、すごい映画だということは判りました。 あれが紙芝居とは、聞いて驚きます。

帰ってきて、貴兄の文章を読み返し、あらためて、貴兄の深い洞察と鑑賞の力に感銘しました。

ケネディ大統領は、演説の中で、「硫黄島」の戦いに言及していますね。 それほど、太平洋戦争のシンボルだったのでしょう。 ケネディ自身も、PTボートを日本の駆逐艦に切断され、死線をさまよい、大海を負傷した部下をかかえて泳いだのでしょうが、その彼でさえ硫黄島は天下分け目の死闘だったのでしょう。

私が45年前、ワシントンに行った際、あれはアーリントンの墓地だったでしょうか、星条旗を打ち立てる兵士達の銅像を見ました。 有名な写真の通りでした。 そして星条旗だけが風にひるがえっていました。 アメリカも全力をあげた戦いだっただけに、あの星条旗は何物にもかえがたい戦争の象徴だったのでしょう。

しかし、硫黄島にいた日本軍将兵の主力は、少年兵や中年の召集兵だったそうではないですか。 大本営や軍令部で参謀肩章をつけた士官達は何をしていたのでしょう。 精神論をぶって理論派を叱咤した辻参謀や、ビルマで多数の日本兵を死なせながら自分だけ士官学校長に転じてぬくぬくと生き残った牟田口軍団長のことを聞くと、運命は残酷なものだと思います。 それに引き換え、赤紙一枚で、狩り出された老年兵に、何が祖国の栄光だったのでしょう。 私の父も、終戦直前に二等兵として召集され、北支に派遣されましたが、幸い生還しました。

「硫黄島の砂」という映画をちょっとだけ見たのですが、ジョン・ウェインの軍曹が遅刻した部下を殴る場面がありました。 そこを通りかかった上官が、「下士官が兵を殴るのは軍法会議ものだ」と言う科白がありました。 殴られた兵士は、「いえ、柔道の技を披露していたのです」とその場をとりつくろっていました。

城山三郎も、海軍の少年兵として、まともな食事も与えられず、毎日殴られてばかりいたそうですが、恐らく私の父も若い上等兵に殴られたことでしょう。 抵抗できない者を痛みつけるのが大和魂だったのでしょうか。 殴れば神風でも吹くと、若い伍長や軍曹は思ったのでしょうか。 まさか。

その性格と慣習は、今の日本のビジネス社会でも残っていませんか。 日本人も他国人に劣らず、残酷で残忍な性質をもっていると思うのです。 そして皆我が家に帰れば善良な夫や父になるのでしょうが。 

特攻機を飛ばしたのも、あたら有為な若者の命を軽んじた、将官の盲目的な恣意に基づいたものだったのでしょう。

それにしても、米軍に投降して、食料を洞窟に届けにきた日本兵を同じ日本兵が撃ち殺し、沖縄ではもっとひどい仕打ちが民間の婦女子に対して行われたと聞くと、日本が平和を声高に叫ぶ資格があるのかと躊躇する気持になります。

それにしても、硫黄島が東京都下だとは知らなかったので、ショックを受けました。 東京の足許で、戦史に残る激戦が行われたのですね。 

「硫黄島からの手紙」の英語の題名をもしご存知でしたら教えてください。 こちらの映画館は、日に何本も違う映画を時間を分けて上映し、題名だけしか看板に出ませんので。

どうかお大事になさってください。 私もほどほどにやっています。 (06/12/20)

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